古書の記述や歯が欠損しやすいことも忌避される理由

内祝いに不向きとされている物について櫛があります。主に女性用の装飾品として普及している櫛ですが、その名前が「苦」や「死」を連想させるのがお祝い事の贈り物には相応しくないとされている理由です。古書の『古事記』には神様のイザナギが死後の世界である黄泉の国から脱出する際に櫛の歯を折って幻を作り出し、追手を引き離す記述がありますが、このエピソードが元で、櫛は「苦」や「死」のイメージに繋がっているとされています。また、櫛の歯は細く折れやすい欠点がありますが、故意ではなかったとしても贈り物を破損させるのは非常に失礼な行為です。そのような事態を避けるためにも櫛を贈り物にするのは避けるのが社会的なマナーと言えます。

古くからの慣習と個人の好みを照らし合わせて判断する

語呂合わせや破損しやすいことを理由に贈り物には不向きとされている櫛ですが、あくまでも古くからの考え方のひとつに過ぎません。絶対に贈ってはいけないとは限らないので、ケースバイケースで判断するのが柔軟な姿勢と言えます。櫛はその用途からヘアスタイルに気を配る人からは喜ばれる品物です。また、高級ブランドの櫛なら市場価値の高さを評価されるので贈り物として扱っても強く咎められることは少ないと言えるでしょう。古くから伝わる慣習を尊重する気持ちも大切ですが、贈り物は感謝やお祝いの気持ちを示す物なので、受け取った相手が喜ぶことを第一に考えて選ぶことを心がけます。個人の好みに合致するなら言い伝えにこだわる必要はありません。